飽商909の"ナローな"時計部屋

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2021年 08月 14日

Long Play Record

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1939年5月19日



"Salle de Chopin"でのデビューリサイタルの前にパリの写真館で撮影されたポートレイト。当時19歳(!)

"ジャケ買い”ではないが、その美麗なる一葉が見事に中央にレイアウトされたこのアルバムカバーはもうこれだけで所有欲を掻き立てられる逸品でありましょう。

装丁は見開きはなく極々シンプル。シングルジャケットに2枚のLPが突っ込まれております。でも帯が嬉しい!そして日本語ライナーノーツには…何故にこんなに音質が優れているのか?と言う疑問に対しての回答が記されておりました。


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当時、最新鋭。ドイツAEG社 交流バイアス方式*42年以降 のMagnetophonによる磁気録音所以の事らしい。この諏訪根自子さん音源は'43〜'44年とあるから恐らくその恩恵なのだろう。

この磁気録音は、総統演説にも大いに活用され生か?録音物か?判別がつかないと言う利点もあり、所在地特定されず暗殺計画回避等にも大いに寄与したという逸話。なるほどぉ…

ちょっと横道に逸れてしまいました。録音はこのJK写の撮影から既に4〜5年が経過している訳ですが、前記事での日本大使館・傷痍軍人慰問会(ドイツに移って間もなくの'42年12月15日)が催された際の少々"イカにも感"漂うショットでのご容姿拝見してもこの時期の音源を顕すに些かの異和もなくその音質の如く俄かにあの時代とは信じ難い異彩を放っています。

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AEG マグネトフォン


CDではラストの2曲配置だった諏訪根自子さん音源は、LPではなんと冒頭に収められており明らかにこの音源をフィーチャーした企画である事が窺い知れます。






ひょんな事からこのエレキ脳筋ロケンローオヤヂをも魅了、虜にし情感的にその提琴の調べにどっぷり嵌り、「もっと聴きたい!」と少ない音源を欲す。…いや?自分に限らず当時から時代を問わずきっとそうだったのであろう?



弓が力をこめて空へすり上る

この痩身のバイオリン奏者を照らし出す人工光

何といふ黄色い光であるのか

蒼白な顔面を、衣の白絹を

この肉體は戰乱の歐洲を通つて來た。
そしていま祖國の、占領軍下のステージに立つ

あゝ、骨身を削つてゆく弦と弦との擦音。

藝術は何と悲愴なものであるか
私の心臓は黄色くなり

泪もまた黄色くなり


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詩人・版画*なかなかに印象的な諏訪根自子さん像=「あるヴァイオリニストの印象」を遺しておられる…家の恩地孝四郎さん


ご歸朝(帰国)間もない頃のリサイタルを観られた後の詩である。完璧とは言い難い音盤でこれだけ揺さぶられるものが秘めてるご演奏、生なら一体どれほどの?そんな一端もこの詩から垣間見させて頂けるし思いを馳せる。

昨年はご生誕100年、来年は没後10年。麗しきその芸術と稀有な人生を、その節目の年の狭間にあって、映画やNHKでドラマ化して回顧するのにはよきタイミングではなかろうか?



by one_after909 | 2021-08-14 17:41 | 諏訪根自子 | Comments(0)
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