飽商909の"ナローな"時計部屋

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2022年 08月 03日

三年坂

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…と言う訳で先日、不発弾の記事を書いてて懐かしくなって引っ張り出して来た中学生の頃に買ったLPと後年のC/D面=2枚目を収めたCD。
あえて裏^^


ビートルズ洗礼前夜、もしかしたら一番嵌ったレコードだったかも?


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グレープはアコースティック・ギターを基とした所謂フォークデュオの形態であった。然しそのメロディは勿論、吉田さんのギターさださんの詩の世界観も暗く重いものであってもありがちな四畳半的なものではなかった事も私的に'余り好きでないかんじの大人世界'っぽくなく感じて、中坊形(なり)に好きだった。


何十年か振りにLPを開けば、歌詞/コード付き楽譜が添付されていた。…あぁそうやったな?

家にあったガットギターで一生懸命試みたが、Fとか難しいコード抑えられなくて全然出来なかった記憶がその緑の譜面と文字に蘇る。
それを長年かけて克服…と迄言わずも少しは弾けるようになったのはBETALESへの異様な執念・passion、なりたい願望からであった。


『フレディ…』のコード進行は、G〜Am〜D7基調の極々シンプルなものでギター取って爪弾けば今ではそう難儀なものではなくなったけど、近頃はコード押さえる指の節々が痛くなってきてしまっている-_-; このレコードを買って間もなく初めて手にしたギター。あれから46年が経過した。

しかし、今こうして改めて聴きますとこのCD vol 2.冒頭の『島原の子守唄』、当時は全く理解出来なかった吉田さんの『バンコ』『絵踊り』凄くいいな112.png…また続くバイオリン・パートも同様に、コンサートを圧倒的に奥行き深いものにしていて素晴らしい。そして


フレディもしくは三教街〜ロシア租界にて

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上海の租界が有名だが、此方は漢口(武漢)を舞台としたもの。


仕事で何度も訪れた街。奇しくも彼処(仕事場)は丁度、旧日本租界だった場所。そこから江沿いに何ブロックか…ドイツ・フランス租界を過ぎ南下した旧ロシア租界の一角…キリスト教、ロシア正教會、ユダヤ教3つの教会が共存した所以でそう呼ばれたと言う三教街は嘗て存在したそうです。

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その面影を辿るなんて余裕も無かったが当時を偲ばせる建築物を目の当たりにしたり、川沿いの港に佇めば実に感慨深いものが確かにあった
*15年前のblog にはこの曲に触れそう記してあった


さださんのお母上:佐田喜代子さんの実話に基づいた詩(後述)・・・である事は、著書『永き旋律 - さだ家の母と子供たち』(新装版'08刊)に触れられていて大変興味深く読ませて頂きました。

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1942年(昭和十七年)に、長崎から上海を経て、漢口へ…



多感な17歳に海を渡られ、異文化に触れられその中に生活されたご様子がとても瑞々しい文体で綴られていて心地良い。戦時下にあっても若さはきっと不自由や制約を凌駕する発見と日々の悦びと充実を齎した事と容易に読み取る事が出来ました。

それは、実在した「ケーキとビフテキ、そしてアイスクリームの美味しい」レストラン=ヘイゼルウッド(私事、中学生当時"ヘイゼルウッドのおじいさん"のヘイゼルウッドって髪か何かのお色目の事とずっと勝手に思い込んでた。店名でした^^;)の事や、"ボンコのおばあさん"も同様に文脈通りパン屋さんの名前であり(*これはこの本からではないけど)、詩には登場しないがお顔見知りになった三叉路のフランス人のオバサンの花屋さんの事とか、香ばしいパンや麗しい薔薇の香りが漂ってくる様。あゝそれは旧フランス租界と不自然に入り組んだあの辺りだろうか?とか読んでて想像が膨らみました。

何より日本租界への通勤(海軍の代行機関でのタイピストとしてのお仕事)の行き帰り、出会われたドイツ青年への胸の高鳴り。触れ合うどころか言葉を交わす事すらない文字通り窓越しの…戦時下の淡い恋心。短いながらも当時に戻られたかの様な初々しいその描写に抱かれた心情が伝わってくる。しかし残酷な現実は・・・ドイツ租界への爆撃で青年の安否は定かにされてはないが永遠に終わりを告げる事となる。唐突に…



このドイツ青年との淡いロマンを、私はのちに成長した雅志に。母の青春の一ページとしておりに触れては語り聞かせました。


「フレディもしくは三教街」は、その話をもとに、雅志が彼なりに創作してくれた作品です。





大好きな歌の背景を色々知れた事は勿論ですが、この章での最後、掲載された歌詞の前に



若さを失った今、当時のことを思い返すとその尊さが身に沁みて、今の若い人たちに言いようのない嫉妬を感じます。そして是非とも伝えたいのです。



と前おきされてそれから語られるこの章の結びの一節に尽きると、ありきたりと言ってはそうなのですが、はい、確かにそう思います。あれは"黄金"だったのだ…と。そして付け加えさせていただければ。。。



つゞく


by one_after909 | 2022-08-03 01:48 | MUSICA | Comments(0)
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